今日から25日の日曜日まで、丹波篠山では雛まつりが催される。
会場は城下町を中心とする市内十七カ所、
それぞれの地域や家々に伝来した雛人形が思い思いに公開される。
先週、視察旅行で訪問した真庭市勝山では
旧出雲街道沿の家々の軒先にズラリと飾られた雛人形が圧巻だった。
篠山の場合は、全員参加というものではないが、
市内の各地で雛人形に出会える楽しさがある。
折からの雨を突いて、丹波焼で知られる今田町を振り出しに
丹波篠山ひなまつりの会場を経巡った。
まずは今田町。丹波焼の窯元である家々に飾られた雛人形は
店先に並べられた焼き物に混ざって目立たないようで
キッチリと存在感を放っている。また、店先に並べられない大きな段飾りは
住まいの座敷で公開されていた。嬉しいのは訪問者のためのお茶が
準備されていたこと。焼き物とお茶、流石なもてなし心である。
つぎの丸山集落は、過疎化する村を宿と料理のコラボで活性化したところ。
かつての藁屋根がトタンでおおわれているのが惜しまれるが
おりからの雨にけぶる風情はなかなかのものだ。
雛人形は集落入口にある公民館に飾られていた。集落内の民家であれば
もっと山あいの村らしいほっこりとした雛飾りになったのでは?と
思わぬでもなかったが、それはそれで全体調和の結果だったのだろう。
つづく市野々会場は、篠山市の北東部にあり京丹波との境目だ。
中世細工所城主であった荒木氏の後裔というS家の赤い壁が印象的な長屋門に
雛人形は飾られている。はじめて足を踏み入れた邸内は荒れ気味ながら
見ごとな庭が広がり、なるほど中世武家の子孫に相応しいところだった。
長屋門に飾られた雛人形も雨に濡れた庭の緑と調和していい佇まい
やはり、歴史を重ねるということは素晴らしいものではある。
市野々からは山越えで宿場町福住へ、かつて産婆さんが住んでおられた
古民家を改修して「さんばやヒグチ」に生まれ変わった集会場が会場。
街道筋の古い佇まいと、昔ながらの姿をうまく残したヒグチ
古い引戸を開けて土間に入るとヒンヤリした空間を彩る雛人形が華やか。
福住は伝統建築物群の申請をしているそうで、承認されれば街並みは
これからも変わらぬ姿をとどめることになる。その街道筋に来年は
ズラリ雛人形を飾れば素晴らしいお披露目になるだろうし、ぜひ見てみたいものだ。
福住からかつての街道を通って篠山の城下町へ走る。篠山川に架かる
京口橋を渡れば河原町、切妻商家群が軒を並べる旧街道沿の町だ。
雛まつりではメーン会場になるところで、なかでも鳳凰会館は個人収集になる
屋形雛人形が見ものである。おりから開催されている木綿織りと相まって
薄暗い会館内は華やな賑わいにあふれていた。いい相乗効果といえそうだ。
河原町で面白かったのは、むかし呉服店だったというKさんのところ
雛人形そのもは控えめな飾り付けだったが、自らが作ったのだという
手作りの人形や手芸品の数々を展示、売るわけでもなく雛まつりを来訪者と一緒に
楽しもうという感じが伝わってきた。こういう人が増えると雛まつりイベントは
もっと自然で、アットホームなものになり、地域に定着していくことだろう。