2009年07月11日

続、篠山の家紋散歩

沢田山小林寺の境内墓地で家紋を探索したあと、東本荘にある市谷城址への登り道を探索するため東本荘へと車を移動した。その途中で、立派な家に据えられた「六つ柏紋」が目に入った。早速、車を路肩に停め、家の表札を見ると小畠家とある。おそらく、園部の宍戸城主であった小畠氏の一族かと思われ、すぐ近くの慈照寺を訪ねてみた。境内墓地に足を踏み入れると、小畠家の墓石が並び立ち、いずれも「六つ柏」紋が刻まれていた。お寺の佇まいも悪くなく、なんだか得した気分である。
市谷城址への登り道は、慈照寺東方の谷筋にある日蓮宗寺院東側の尾根とにらんで車を走らせる。城址が見えるところに車を停め、登り道を探して歩き出すと「一文字に三つ星」の家紋を付けた家がある。「一文字に三つ星」といえば戦国大名毛利氏と同じ紋であり名字が気になったが、さすがに見ず知らずの方の家先にズカズカと入っていくことははばかられる。ひとまずあきらめて、寺院を目指す。

 
六つ柏紋 一文字三つ星
   六つ柏(柏車)紋         一文字に三つ星
 
住職らしき男性に城址のことを聞くと、「分かりません」とのこと、城址のある山はお寺の屋根後方に見えているのに残念!さらに、民家の方に聞くと「城のことは知らないが、山ならここから登れる」と家の隣にある藪に案内していただいた。「松茸の季節でなければ、自由に登っていいよ」との有難いことばを頂戴、お礼を言ってつぎの目的地である野々新に向かおうとした。すると、さきの方がわざわざ追いかけてこられて、「家内に聞くと、山上に城があるそうや!」と嬉しいことば。最初は胡散臭そうな対応であったが、一度話すと田舎の人は親切です。改めてお礼をいい、「一文字に三つ星」の家のことを聞くと「あれは宇野さんの家や」と教えていただいた。せっかくなので、すぐ東の山麓にある寶鏡山洞光寺へ家紋散策に行くことにした。
 
洞光寺-遠望
洞光寺へ、後方にある山の頂上に市谷城址がある。

 洞光寺−山門
古色ただよう洞光寺山門 (2008年12月6日)
 
洞光寺は南北朝時代後期に創建された曹洞宗の寺院で、足利将軍家や丹波守護細川氏の崇敬を集め丹波三ヶ寺の一つに数えられた古刹である。境内墓地にお邪魔すると、まず目に入ったのが荒木家の「獅子牡丹」紋、東本庄東方の山上にある細工所城の城主が荒木氏であったが後裔にあたる家なのだろうか?ついで大對家の「抱き柊」紋、大對という名字も「柊」紋も珍しいものだけにその出自が気になったが資料が墓石だけでは諦めるしかない。先に見た宇野家の墓もあり「一文字に三つ星」、中森家も同じ紋である。篠山市内の小林寺では、同姓でありながら多様な家紋が用いられていたが、こちらでは異姓で同紋である。ここらへんが、家紋と家の関係を考察するときに大きなハードルとなるところである。
家の歴史を調べるとき、たしかな古文書や町の資料館などに先祖の記録が残っているケースは武家や旧家ならともかく、一般の家においては稀なことである。そのようなとき、ヒントのひとつになるのが家紋である。というのは、家紋には家の目印として成立した背景があり、その初めにおいては名字と一体化したものであったからだ。それが、家の栄枯盛衰などによって、本来の家紋を変更したり、忘れられてしまったりした。決定的となったのが、明治維新のとき、名字をもたなかった家が名字を名乗るようになった。そのとき、併せて家紋も用いるようになった。なかには長く秘していた遠い先祖の名字や家紋を用いた家もあったであろうが、よほどの家でない限り名字はともかく家紋とは無縁だった。その結果、表現は悪いがそれぞれ好きな家紋を家の紋とし、名字と家紋の一体感は大きく失われてしまった。 
残念なことだが、それはそれで仕方のない現象というしかない。とはいえ、墓石に刻まれた家紋と名字を見比べていくと、そこには勝手次第に家紋を用いたとは思われないものがある。洞光寺の境内墓地にあった赤井家の家紋を見ると、戦国時代に黒井城に拠って明智軍に抵抗した赤井氏と同じ「結び雁金」紋であった。やはり、すべてとはいえないが、家紋と名字にはルーツにつながる名残があるように思えてくるのである。
 
獅子牡丹紋 対い柊紋 結び雁金
  獅子牡丹紋      対い柊紋         結び雁金

小林寺でも、洞光寺でもそうだったが、古い墓石がピラミッド状に積まれ無縁墓あるいは古墓としてまとめて供養されている。古い墓地を整理しキレイにした結果だとは思うのだが、家の歴史、ひいては村、町の歴史が封じ込められてしまっているようで残念に思われる。しかし、古いものを整理していかないと、新しいものが生まれる余地もなくなってしまう。これも仕方のないことだが、残念なことには違いない。子孫が繁栄し記録が残っていく家はいいのだが、祀りが途絶えた家となれば風化していくばかりとなる。まさに、栄枯盛衰、諸行無常を実感するところである。
洞光寺でシンミリとしたあとは、細工所城主であった荒木氏の子孫が続くという市野々へと向かった。丹波の戦国時代、細工所城主荒木氏綱は丹波鬼の異名をとった武将で、波多野氏に属して明智軍を敢然と迎え撃った勇将であった。落城ののち、荒木氏は紆余曲折のすえに帰農したといわれている。かつて細工所城に登ったとき、山麓の民家の方から荒木氏の後裔が市野々で続いているというお話を聞いた。そのときは荒木姓のままと思っていたが、のちのち丹波荒木氏の系図が荒木姓改め澤山家に伝わっていることを知った。以来、いつか機会をみつけて市野々にある澤山家を訪ねようと思っていたのだ。
市野々は篠山市の東北に位置し、京丹波市との境目にある山中の集落である。車を走らせていくと、集落に入ってすぐのところに素晴らしい門構えの家があらわれた。「これではないか!」と表札を拝見すると、間違いなく「澤山」家である。欣喜雀躍というとおおげさだが、 門の佇まいはもとより、かつては藁葺きであったろう母屋の屋根、門から見える庭の古さ、いずれも旧家らしい雰囲気が充満している。そして、母屋の屋根に据えられた「三つ柏紋」を見て、改めて目指す澤山家であることを実感した。

澤山-門
篠山川越しに澤山家の屋敷を遠望

家のすぐ近くの山麓にある大雲山久昌寺は澤山家の菩提寺であろうか、参道の脇に澤山家の墓所があり、墓石に刻まれた「三つ柏」紋をじっくりと拝見することだできた。荒木氏の三つ柏紋は葉の細いもので、系図によれば今出川氏から賜ったものという。また、裏紋として波多野氏から下賜されたという「二つ引両」を用いられているらしい。真偽はともかくとして立派な由緒であり、戦国時代を経て近世を生き抜き、いまも先祖の祀り続けられている。まことにめでたい家である。
 
澤山-屋根紋 澤山-古紋 澤山-墓紋
母屋の三つ柏紋   古い墓石に刻まれた柏紋  新しい墓の柏紋  

篠山に限らず丹波は、古い家、ものが現代に伝えられており、これからも丹波の山城探索と家紋散策をネチネチと続けていきたいと思っている。 by kuma
posted by うさくま at 19:46| Comment(5) | TrackBack(0) | 家紋
この記事へのコメント
初めてコメントさせていただきます。

ネットでなんとなく自分の姓を検索していたところこちらの記事にたどり着きました(笑)

少し前に出自について色々調べたりしていて、こちらの記事は大変興味深いのですが、何か他にご存知のことがあれば伺いたいです。
Posted by 澤山 at 2013年08月13日 03:11
澤山さま

書き込みをありがとうございます。
篠山の澤山家は細工所城主の末裔といい
伝来系図が東大史料編纂所に所蔵されています。
何をどのように情報提供すればよいのか
書ける範囲でお聞かせ願えますか。
Posted by kuma at 2013年08月21日 15:46
kuma様

大変久しぶりの投稿で失礼します。最近少し時間ができ、また関西に行く用事が増えたためまた気になって検索してみたところ、6年前に見つけた貴投稿、お返事をまた見つけた次第です。
ご回答いただきありがとうございました。
その伝来系図というものを東大の資料編纂所に見に行ってみたいのですが、詳しい名称等は分かりますでしょうか。
何卒よろしくお願い申し上げます。
Posted by 澤山 at 2019年09月06日 20:20
ご無沙汰しています。

東京大学史料編纂所のデータベースに
沢山愛之助(兵庫県多紀郡市野々村) 蔵系図を
模写したものがネットで閲覧できます。

https://clioimg.hi.u-tokyo.ac.jp/viewer/list/idata/200/2075/525/?m=limit

一度アクセスなさってみてください。
おそらく、曽祖父にあたる方あたりまでが
系図に書かれているのではないでしょうか?
Posted by at 2019年09月12日 18:11
kuma様

ご教示いただきありがとうございます! データベース上で閲覧できるのですね!
一読したところ、父の高祖父にあたる人が家系図の一番下に記されているようです。
このようなものがネットで見れることに驚きましたが、長年気になっていたことが分かり大変嬉しいです。いろいろと細かいことも調べてみようと思います。ご親切にいろいろとご教示くださり本当にありがとうございます。
Posted by 澤山 at 2019年09月25日 01:25
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