2009年04月13日

戦国時代はそんなに甘くはないで!

大河ドラマ「天地人」が人気を呼んでいるらしい。 
戦国時代好きのクマとしては、ストーリーにいささか承服しかねるところもあるが努めて見ている。時代劇は往時を再現できるはずもなく、現代風な解釈を加えつつ、虚実が取り混ぜられてできあがっていることは理解しているつもりだ。しかし、歴史ドラマと銘打った場合、主人公に為するあまり史実を曲げることはあってはならない。以前、直江兼続と上杉景勝のヘアスタイルがおかしい(月代でない)ことを指摘したが、あれは、コミケで流通しているマンガの延長と思えばそれだけのことだ。しかし、ここ数回のストーリー展開には、「え〜ッ、それはないやろ・・・!」と、いささか驚かされている。
謙信死後の上杉氏において最大の危機となった「御館の乱」が、昨日、玉鉄演じる景虎の死をもって景勝方の勝利で終わった。御館の乱において上杉家中は二分し、景勝方には上・中・下越の国人領主のほとんどと上田衆が味方した。一方、景虎方には上杉十郎、本庄秀綱、北条高広ら謙信在世中の有力者、実家の小田原北条氏会津の葦名氏甲斐の武田氏らの戦国大名が味方した。緒戦は本庄秀綱の先制攻撃、すぐれた外交手腕などもあって景虎方優位に展開した。その局面を打開して景勝方有利に転じるきっかけとなったのが、武田勝頼との和議の成功であった。
ドラマでは、武田氏との和議成功の立役者は直江兼続となっていた。当時、まだ十代の若造である兼続が交渉に行ったところで武田方が受け入れるはずもない。現代でもそうだが、外交は他国にも名の知られた大物が出て行かなくてはまとまるものもまとまらない。史実としては、上杉家中の大物国人で景勝に味方した新発田長敦の外交手腕の結果であった。また、長敦の弟五十公野重家、一族の竹俣慶綱らが軍事的に活躍したことで景勝方は次第に劣勢を盛りかえしていったのである。ドラマの構成上から仕方のないこととはいえ、兼続ら上田衆ばかりが活躍しているのは、見ていて「おい、それはないやろ!」と突っ込んでしまった。
武田勝頼が景勝と和議を結び、実家北条氏からの援軍も雪のため足止めをくったことで、景虎は追い詰められてしまった。そこに、景勝と景虎の和議を取り持とうと立ち上ったのが、前関東管領の上杉憲政であった。憲政は景虎の長男道満丸を伴い、和議仲裁のために春日山城へ向かったところを景勝方の兵に道満丸ともども斬殺されてしまった。ドラマでは和議を嫌う景虎方分子の仕業と描かれていたが、それによって景虎方が有利になるはずもなく、たとえ景虎方の勝利に終わったとしても長男を殺害した者が許されることなどありえない。しかも、犯人は景虎に付いて越後にきた遠山氏のように匂わせていた。景虎の一番の味方たる小田原からの随伴者が、そのような浅はかなことをするとは到底思われないことだ。勝利が見えてきたことで和議を避けたい景勝方が、本来なら主筋にあたる上杉憲政の介入を斥けると同時に亡き者にせんとして、道満丸と一緒に始末してしまったとみた方が自然だ。景勝方(景勝本人、兼続の思いはともかくとして)にすれば、乱が終わったのちのことを考えれば、障害となるものは少ないにこしたことはない。戦国乱世においては当然の思考というべきで、心に痛みはあったとしてもドラマのようにメソメソ泣くはずもない。泣いたとすれば空涙であろう。
さて、憲政の死で万事窮した景虎は小田原を目指して越後を脱出しようとし、シンパである堀江宗親が拠る鮫尾城に逃れた。ところが、宗親は景勝方の安田顕元の裏切り工作を受け入れており、ここに景虎は無念の自害を遂げることになるのである。文字通り、四面楚歌、袋の鼠状態のなかで最期を迎えた景虎、まことに残念無念なことであったろう。嫁さんの相武紗季を抱いて、心静かにあの世に旅立つなんてことはありうべくもないことである。
ドラマは面白くなければ・・・!ということはよく理解できる。より多くの視聴者をゲットしたいという制作側の思いもわかる。しかし、史実を曲げてまで主人公を際立たせ、ドラマを面白くしたいというのは「曲学阿世」に似たいやしい心持であろう!。天下のNHKなんだから、ビシっと史実を踏まえた骨太(月代もキチット剃った!リアリティのある)なドラマづくりをしていただきたいものだ。見るたびごとに史実が曲げられ、メソメソした小僧っ子の兼続が活躍する!戦国時代はそんな甘い時代では、おまへんで!大河ドラマの語る話を史実と思っている人が多いと聞くだけに、もっとチャンとしたドラマを制作、放映すべきではなかろうか! by kuma
posted by うさくま at 17:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ(TV)を楽しむ
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